業界研究

【流通業界徹底研究ガイド】動向と覚えておきたい用語を解説

流通業界とは

流通業界というのは比較的なじみのある言葉ですが、そのイメージをはっきりつかむのは難しい業界でもあります。その原因は、さまざまな業態の企業が流通業として分類されているからともいえるでしょう。

とはいえ流通業は一般的に、消費生活に深く関わる製品やサービスを扱っており、誰しもがなんらかの業種でお世話になっているはずです。このように全体像をつかみにくい業界ですので、流通業界を志すのであればしっかりと業界研究をおこないましょう。

流通業界の概要

流通業とは、生産したものを消費者に届けるまでの仕事のことをいいます。広義でとらえると交通業や運輸業もその範囲に入りますが、一般的に小売業と卸業の2つをまとめて流通業界と呼ぶことが多いです。

小売業とはスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、消費者に直接販売をおこなう業種をいいます。一方の卸業とは、生産者から商品を仕入れて小売業などに卸す仕事です。

小売業に関しては店舗で販売する形態のほかに、店舗を持たない通販業なども含まれます。最近ではインターネットの普及にともない、この通販業が大きく発展してきました。また生産者から直接小売へ卸すという卸業を介さない流通形態も増えつつあり、小売・卸ともに流通業界は大きく変化しつつあります。

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流通業界の業績推移について

  • 業界規模:148兆5,215億円
  • 平均年収:548.5万円
  • 平均継続年数:11.6年

流通業界の業界規模は148兆5,215億円とたいへん高い数字ですが、これは小売業・卸業の、それぞれの業界規模額を足したものです。しかし卸業・小売業ともに単独の業界としてもトップレベルの業績を挙げており、いずれにせよ規模の大きい業界だといえます。

業界規模に対して平均年収は548.5万円と、それほど高いとはいえない数字です。トップクラスの企業をみますと1,000万円超の企業もありますが、平均的な年収が低いのが流通業界の傾向だといえます。

平均継続年数は11.6年と低い数字を示していますが、あくまでもこれは平均です。企業によっては30年以上の継続年数を示しているところもあり、企業ごとのばらつきがかなりあります。

流通業界の動向

物流業界の動向について解説します。あらゆる業界にも共通していることですが、業務の効率化やサービスのIT化が著しく、物流業界にも革命が起きています。インターネットやスマホが普及する前、商品を購入するためには、顧客が自ら店舗に足を運び商品を買うことが主流でした。

このような店舗型の業態である、百貨店、スーパーマーケットなどを始め、家電量販店やコンビニエンスストアなどが物流業界では主流でしたが、近年はWebを介したオンラインショップなどが勢いを増しています。顧客が自ら足を運ばなくても、商品を購入することが可能になりました。

そして時代の変化により、大量消費の思考から、「必要な物を必要な分だけ買う」という思考になった消費者は、「欲しい物をできるだけ安く便利に買う」という欲求が芽生えました。商品を売るのが難しくなってきた時代に突入し、物流業界の生存競争が激化しています。

物流業界の動向などについては、こちらの記事でもさらに詳しく解説しています。

流通業界の細かい職種分類について

  • 仕入れ・物流
  • 販売
  • 管理
  • マーケティング

流通業界には数多くの業種が存在しますが、ここでは小売・卸業の2つの業種に絞り、その主な仕事内容を紹介します。小売における仕入れ・物流とは、文字通り商品の仕入れに関する仕事です。販売戦略に合わせた商品の選定や買い付けなどをおこないます。

販売とは、店舗で販売業務に従事する仕事です。販売でも店長など役職が上がれば、仕入れや人材の管理などの店舗マネジメントをおこないます。卸業における管理とは、顧客情報の維持管理をおこなう業務で、どういう顧客にどういう商品が売れたかなどのデータを管理する仕事です。

マーケティングとは、販売促進や顧客拡大につながる戦略の立案などをおこないます。流通業界には他にも営業や経理などさまざまな職種がありますので、自分にあったものを探しましょう。

マーケティング会社ランキングについて、知りたい人はこちらの記事もチェックしてみてください。

主要企業5選紹介

流通業界は業態もさまざまな企業が数多く存在しています。また新しい業態への進出や企業の吸収合併も盛んで、業界の様相は刻々と変化しているのが実情です。そのためなかなか現状をとらえにくい面が流通業界にはあります。

しかし、それでも大切なのは流通業界の主要企業を知ることです。主要企業の取り組みや方針を知ることで、流通業界に今求められていることが見えてきます。ここで取り上げるのはよく知られている企業ばかりですが、実際はどのようなことをしているのか詳しくみていきましょう。

①イオン株式会社

  • 企業名 イオン株式会社
  • 取締役 代表執行役社長 グループCEO 岡田 元也
  • 従業員数 347人(単独)143,374人(連結)
  • 設立年月 1926年(大正15年)9月

イオン株式会社は、国内の流通企業でも最大手の会社です。イオンリテールを始めとする総合スーパー事業、マックスバリュなどのスーパーマーケット・ディスカウントストア事業、小型店事業やドラッグファーマシー事業など、多くの小売事業を展開しています。またその他にも金融事業や国際事業など幅広く手がけており、小売業界の売上高トップを維持しています。

そんな流通の巨人ともいえるイオンといえど、小売ニーズの変化や、業態の枠を超えた競争の激化に抱く危機感を隠していません。そうした環境の変化に対応できる、柔軟で強じんな精神力を持った人材が求められているのがイオンの職場だといえます。

②株式会社セブン&アイ・ホールディングス

  • 企業名 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
  • 代表取締役社長 井阪 隆一
  • 従業員数 140,938人
  • 設立年月日 2005年9月1日

株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア事業、総合スーパー事業、食品スーパー事業や百貨店事業などの小売事業の他にも、金融事業やITサービス事業などの幅広いグループ会社を持つ企業です。イオンと並び、国内小売2強といわれています。

セブン&アイは幅広い業態の傘下企業を連携することで目指すのは、今後のニーズの変化や競争に勝ち抜く革新的な事業です。創業の理念である「誠実と信頼」を体現できる、お客様の声に応えることを第一とした誠実な人材をセブン&アイでは求めています。

③株式会社ローソン

  • 企業名 株式会社ローソン
  • 代表取締役 社長 竹増 貞信
  • 従業員数 9,403人 (連結)
  • 設立年月日 1975年4月15日

株式会社ローソンは、主力のコンビニエンスストア事業の他にもスーパーマーケット事業や総合エンターテインメント事業、複合映画館の運営を手がける小売大手の企業です。小売事業の他にも旅行代理店などの事業を持っていますが、銀行業に乗り出すための準備会社などもあり、さらなる多角化をすすめています。

またコンビニエンスストア事業では、中国を始めとした海外進出にも意欲的です。ローソンでは一丸となって、経営に取り組む姿勢を社員に求めています。そうした取り組みの中で企業価値の向上を目指しているのがローソンの社風といえるでしょう。

コンビニ業界について、こちらの記事でもさらに詳しく解説しています。

④豊田通商株式会社

  • 企業名 豊田通商株式会社
  • 取締役社長 加留部 淳
  • 従業員数 3,614名(単体)57,988名(連結)
  • 設立年月日 1948年7月1日

豊田通商株式会社は、自動車で有名なトヨタグループの総合商社です。国内外問わず流通させている自動車関連事業で、営業利益の7割を稼いでいます。自動車関連の他にも化学・エレクトロニクス、金属、エネルギープラントや食品・生活産業まで幅広く手がける企業です。

海外拠点は数多くありますが、中でもアフリカの進出にかけては抜きん出ており、54カ国中53カ国をカバーする強い事業基盤を持っています。そうしたグローバルな会社ですので、国際的に挑戦したいと思う方にはおすすめの仕事だといえます。

⑤丸紅株式会社

  • 企業名 丸紅株式会社
  • 代表者 國分 文也
  • 従業員数 4,458名
  • 設立年月日 1949年12月1日

丸紅株式会社は、芙蓉グループの大手総合商社です。生活産業の穀物事業や発電事業で業界をリードしています。他にもプラント関連や輸送機関連、農業化学品や金属関連などが強く、世界各国に拠点を持つグローバルな企業です。また、既存事業だけでなく新規事業にも強い意欲をみせ、競争力の強化をすすめています。

国際的に活躍する丸紅は、グローバル社会の一員としての責任を果たすべく、社会経済の発展や、人々の生活向上に寄与する事業展開を目指しています。こうした取り組みの中で力を発揮できる、意欲的で責任感の強い人材が求められているといえます。

あなたが流通業界に向いているか、適性を確認してください

就活では、自分に適性のある仕事を選ぶことが大切です。向いていない職業に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまいます

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流通業界の内定をもらうために覚えるべき用語

ここでは流通業界の内定をもらうために覚えておくべき用語を解説していきます。流通業界は東京オリンピックを控え、注目されている業界の1つです。就活生の関心もこれまで以上に高まっている業界と言えるでしょう。もちろん流通業界で用いられる用語について学ぶことに多くの時間を費やす必要はありません。

それらの多くは実際に働き出してから身につければ良いものであり、就職活動においてそれらについて質問されることは少ないでしょう。しかし基本的なものについては質問される可能性があります。そのような際に適切な回答を行えるよう、以下、しっかりと理解しておくようにしましょう。

ABC分析

流通業界の内定をもらうために覚えておくべき用語の1つ目は、ABC分析です。ABC分析とは、その名の通り、対象をその重要度に応じてA・B・Cの3段階にランク付けし、それにより現状を把握しやすくする分類法です。企業経営を行うにあたって、どの事業のどのプロジェクトが自社の収益を支えているのか、どのプロジェクトが足を引っ張っているのかを把握することは非常に重要なことです。

しかし多くの商品を扱い、多くのプロジェクトを行っている場合、それらを特定するのは困難になります。そのためこの分析法を用い、現状を整理するのです。流通業界においては、商品における過剰在庫の防止・削減は重要なテーマになります。販売数や在庫数などの基準により各商品を分類することで、それぞれの商品の発注計画等を最適なものにすることが出来るのです。

売り場効率

流通業界の内定をもらうために覚えておくべき用語の2つ目は、売り場効率です。売り場効率とは一定面積当たりの売上のことです。商品を販売する際、商品を陳列できるスペースには限りがあります。いくらそのお店にとって売れ筋な商品であったとしても、その商品自体を陳列するために広いスペースが必要となる場合、一定面積当たりの売上は他の商品に比べ劣っている可能性もあります。

そのような場合、広いスペースを必要とする売れ筋の商品よりも、他の商品を優先的に陳列したほうが、結果的に店全体の売上が向上することもあるのです。限られたスペースを最大限有効に活用することを考える際、売り場効率は重要な指標となります。売り場効率を考えることで、1㎡あたりの客数を増やす、単価を上げる、といった生産性の向上が期待できるのです。

POS

流通業界の内定をもらうために覚えておくべき用語の3つ目は、POSです。POSとはPoint Of Saleの略称であり、商品の売上の管理や在庫チェック、それに応じた発注業務を自動的に行ってくれるシステムのことです。有名な事例としては、コンビニにおいてこのシステムが広く導入されています。

コンビニではバーコードで商品を読み込むことで、その店における商品ごとの売上、在庫数をリアルタイムで計算しています。そして商品の在庫が一定数を切った際には、自動的に商品の発注データの作成まで行っているのです。

これにより在庫不足のリスクを最小限に抑えることが出来るのはもちろん、どの商品が売れているのか、どの商品が不人気なのかを把握することが出来、それを今後の経営戦略に活かしていくことも可能になるのです。

オムニチャネル

オムニチャネルとは、様々なスポットからユーザーにアプローチする戦略のことを指します。一般的に、企業が商品を顧客に宣伝するためには、店舗を運営したり、イベントを開催したり、そしてインターネットなどを介して広告を出したりします。

しかし、このような経路のままだと、ユーザーは店舗に来なければ商品を買うことができない、オンラインショップで商品ページを閲覧しなければ購入ボタンを押すことができない、というように販売方法や購入方法が限定されてしまいます。ですが、このような販売方法を1つに統合することで、どのようなスポットからでもユーザーが購入できるようになり、さらに店舗とオンラインショップの在庫情報や個人情報も共有することで、物流までも統合することができます。

オムニチャネルを導入する企業は続々と増えています。今後も多くの企業でオムニチャネルは採用されていき、会員情報や在庫管理などのデータを一本化し、顧客がいつでもどこでも商品を購入できるようになるでしょう。

IoT

IoTとは、製品に通信機能を搭載し、自動認識、自動制御、遠隔計測などの機能を持たせることを指します。例えば、製品をインターネットに接続し、スマホなどを介して遠隔から操作をすることが可能です。すでに家電の分野で話題となっていますが、声に反応して電気を消したり、スマホ経由でお風呂を沸かしたりと、直接製品に触れて操作をしなくても動かすことができます。

実は、家電以外にもIoTは身近に存在しています。自動販売機やタクシーなどがIoT
の先駆者ともいえます。自動販売機は機械自体に通信機能を搭載し、在庫管理や売上データを送信して、補充業務の効率化をおこなっていました。タクシーは位置情報をセンターに送信して一括管理し、待っている顧客の元にすぐに行けるようなモデルを作り上げました。

流通業界研究のおすすめ書籍紹介

流通業界をもっとよく知るためには、書籍での研究も視野に入れましょう。ネットやニュースなどの情報は手軽に得られますが、その情報を正しく理解するためには基本的な知識が必要です。書籍ではそうした重要な知識を詳しく解説しているものが数多くあります。

そうした書籍に触れることで、より質の高い業界研究がおこなえることでしょう。流通業界を目指すのであれば、こうした書籍も視野に入れた幅広い研究をおこなうよう心がけたいものです。

①図解入門業界研究 最新流通業界の動向とカラクリがよ~くわかる本 [第3版]

図解入門業界研究 最新流通業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』は、流通業界の最新事情とトレンドを図解を用いて分かりやすく解説する一冊です。最新、といっても2009年の発行ですので、やや古い感は否めませんが、世界経済の流れを一変させた世界金融危機のあとに出版されていますので、まだまだ現在でも対応できる内容といえるでしょう。

流通業界は業界規模が大きい分、社会や経済のさまざまな動向に左右される業界でもあります。本書ではそうした考慮すべきさまざまな影響の要因について、図解を用いながら詳しく知ることができます。流通業界の現状や展望、業種別の動向や仕事の流れ、流通の仕組みまで、業界を目指す人から業界人にも役立つ一冊です。

②月刊激流 2017年 02 月号[流通業界2017年全予測]

月刊激流 2017年 02 月号[流通業界2017年全予測]』は流通業界情報の専門誌で、この号では流通業界の2017年の動向を予測した特集が掲載されています。総合スーパーやコンビニエンスストア、食品卸など各業態別に細かく記事が分けられており、それぞれの現状や動向から今後の展望を予測しています。またセブン-イレブン古谷社長など、業界をけん引するトップ達のインタビューも必読です。

さらには国内だけでなく中国や欧州など海外の流通市場についても触れており、最新の流通業界の現状をグローバルに知ることができるでしょう。こうした業界情報誌を定期的に購読するメリットは、業界の最新情報を良質な形で得られることにあります。流通業界を志望するのであれば、こうした雑誌での業界研究もおすすめです。

流通業界を深く知り就活を有利に進めよう!

流通業界は業界規模が大きいので、業界内だけでなく社会や経済にもおおきな影響力を持つ業界です。またグローバル化や新規業態などさまざまな事業も展開していますので、非常にやりがいのある仕事だといえます。

就活生にも人気に高い業界ですが、就活を有利にすすめるには業界への高い理解が必要です。幅広い業界研究を心がけて、流通業界を目指しましょう。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

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