人々の健康を守る保健師とは
保健師とは、看護師の資格を取得している方が、更に大学や保健師養成校に入学した後、所定の時間数の教育を受け、国家試験の受験資格を得てから試験に合格して取得できる国家資格です。試験は年1回で合格率は80~90%となっています。保健師は「看護師と保健師の知識を併せ持つエキスパート職」といえるでしょう。
保健師が看護師と違うのは、看護師が病気やケガに関する治療・診療の補助やお世話をするのに対し、保健師は健康な人も含めた全ての人に対し、病気やケガの「予防のための活動」を行うところです。この記事では、保健師に向いている方や活動領域、保健師になるための面接突破のヒントなどをご紹介したいと思います。医療系の職業を目指されている方は職業選択の参考にしてみてください。
保健師に求められる人物像
保健師は多くの人の健康を支える仕事ですので、「人のためになる仕事をしたい」というホスピタリティがある方に向いています。活躍の場はさまざまですが、どの場面においても対人業務がメインとなってきますので、コミュニケーション能力が高くないとできない職業です。
また保健師の仕事は目に見える商品を扱う仕事ではなく、短期間で効果がめきめきと感じられるといった類のものではありません。手応えがなくても、信念を持って粘り強く取り組むことができるのも重要となります。次の項目からは保健師に求められるより具体的な人物像をご説明しますので、自分は向いているのかどうか判断の参考にしてください。
思いやりがある人
業務の中で、独居老人や子育て中のお母さん、障害がある方など、社会と繋がりづらい状況の中、孤独を感じている方と接する機会もあります。その人の置かれている状況を理解し、自分のことのように考えられる共感力や、人としての思いやりを持っていることもとても大切です。
人の話に耳を傾けられるカウンセリングマインドがある方が向いていますが、弱っている方の話に同調しすぎると自分自身がしんどくなってしまいます。いわれるがまま全てを聞くだけでなく、冷静に解決の糸口を探し、判断できる知識と強さも必要です。どんなに気持ちが暗くなるケースを担当したとしても、リフレッシュして改めて仕事に向き合える精神力も必要とされます。
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コミュニケーション能力が高い人
保健師は、老若男女さまざまな人に対して保健指導を行う仕事です。健康増進の為の指示を人に出すことが苦にならず、臆することなく誰とでもコミュニケーションを取ることのできる性格の方が向いています。また、人知れず悩みを抱えている人の対応をすることも多いので、話しやすい雰囲気がある方が好まれます。
初対面の人と「今日はどうされましたか?」と一日に何件もの面談をする場合もあるでしょう。スムーズに話を進めていく会話術や、相手の話を聞く時の真摯な姿勢があるかどうかも重要なポイントです。必要性を感じた場合に、カウンセリング関連の勉強をするのもありですが、元々持っている性格が対人業務向きであれば、よりスムーズにカウンセリングに対応していけるでしょう。
コミュニケーション能力を向上させる方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
物事を総合的に見ることができる人
医師や看護師は、何らかの原因で発生した体の不調を訴える患者に診断を下し、外科手術や投薬による治療をおこないます。そのほとんどが対処療法になります。保健師の場合は健康診断や検査の結果などで膨大なデータを読解し、これから起こりうる健康不良を未然に防ぐのが仕事です。
まだ病気になっていない状態で、微妙な数値の変化や地域の環境特性、対象者の年齢や食生活、持病などのさまざまな条件を考慮して、リスクを回避する指導を行わなければならなりません。そのためには、データを解読する力と判断力、広い視野で物事を総合的に見極める力が求められます。
保健師の志望動機で重要な3つのポイント
次に、保健師への就職や転職の際に応募先に伝える志望動機の重要なポイントを紹介します。 志望動機は、採否の結果を左右させる判断材料の大きな要素の一つになりますので、決してあなどってはいけません。
「何となく保健師になりたい」というような漠然とした内容では自己理解ができていない、責任感が無い人物の印象を与え、マイナス評価になってしまいます。「保健師になりたい」という自分の熱意を言語化し、明確に述べることが採用への道に繋がっていきます。次からご紹介する3つのポイントを押さえて志望動機を作成して下さい。
なぜ保健師でなければならないのかを明確にする
保健師でなくとも、国家資格を必要とし、それを活かせる医療関係、福祉関係の職業として、看護師を始め介護福祉士や作業療法士など、さまざまな職種があります。就職活動の際は、その中でなぜ保健師という職業を希望するに至ったのかを自分の中で明確にしておかなければなりません。
保健師は看護師資格も取得しているので、なぜ看護師から更なるステップを踏み保健師を目指すことにしたのかなど、きっかけや動機を説明し、面接官に納得してもらえるようにしましょう。注意しなければならないのは、応募者の中には似たような動機で応募している人達が何人も居ますので、自分の言葉で、自分だけのストーリーを作成することです。
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なぜその企業・機関でなければならないのかを明確にする
保健師が活躍する場所は行政や企業、病院、学校などざっくりわけると4つあります。働く場所によって対象者も変わり、企業なら産業保健師として、働いている人の健康やメンタルヘルスを守る役目。学校ならば学校保健師となり学生が対象ですが、養護教諭という免許を必要とする保健室の先生とは職域が異なります。
行政保健師は立場は公務員となり地域住民の健康のために働く仕事となり、病院保健師は病院で行われる健康診断や感染予防など職務領域は就職先の病院やクリニックなどによって異なります。赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層が対象となるでしょう。このように同じ保健師でも就業先は多岐に渡りますので、応募の際は「誰を対象に」「何をしたいのか」、その企業・機関を選択した理由を明確に述べることでより一層熱意を伝えることができます。
面接で熱意をアピールする方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
将来設計を明確にする
保健師の仕事は「きつい」「きたない」「きけん」の3Kと呼ばれるほかの看護職に比べ、土日祝日休みで残業もほとんど無い場合が多く、ワークライフバランスも安定しています。そのため定年まで無理なく働ける職業として人気が高くなってきています。就職市場では高倍率の職業となってきており、「せっかく保健師になる資格を取ったのに、保健師として就職できない」という人も多いです。
しかし、内定がゴールではありませんので、選考の際にはその先を見据えたアピールをしていかなくてはなりません。その職場でどのように成長していきたいのか、どのような仕事がしたいのかなど将来設計を明確にして考えを伝える事ができると、他の就活生に差をつける事ができます。しっかりPRしていくようにしましょう。
保健師の志望動機例文
志望動機は「保健師になりたい」という単純な気持ちを話すだけでは、面接官に伝わりません。応募者全員がそうだからです。なぜ保健師になりたいのか、きっかけや動機の説明の後に、自分が保健師としてどういった仕事がしたいのか、どのように働いていきたいのか、希望を伝える事も重要です。
採用する側は、淡々と与えられた業務をこなすだけの保健師より、やる気や責任を持って能動的に行動する人材を求めています。目標や未来図を描いて伝えた方が、面接間も採用後のイメージがつき易く、好印象となるでしょう。ここからは「保健師を希望する動機+どのような働き方をしていきたいか」を含めた例文を2つご紹介しますので志望動機作成の参考として下さい。
例文①
私の親戚で乳がんになって若くして命を落とした方が居ました。病気の早期発見ができていれば、もっと別の人生があったのにと遺族が嘆き悲しむ姿を見て、病気を予防する仕事に貢献したいと思いました。
医療系の職種について調べる中で、病気の予防について保健師にできることが沢山あると感じ、興味も持つようになったのがきっかけです。保健師となって予防医学の知識をもっと地域住民に広げたいと考え、志望させていただきました。
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直接身内や親戚などの看護や介護などを経験した、死を身近に感じたなどは自然な流れで、最も理解されやすいエピソードです。特にそういった経験が無くても、そのような話を聞いて、自分が感じたことを伝えるのもありです。
予防医学は近年注目されている分野といえます。その予防医学の中で重要なポジションにいるのが保健師です。予防医学に興味を持ち、それを広めるために貢献したいという熱い思いを伝え、志望動機にするのもよいでしょう。
例文②
大学在学時にメンタル不調に悩まされている友人が居たり、アルバイト先の店長が鬱になり、突然出社できなくなって店が大変なことになったりという事を経験しました。こういった経験から日々の健康管理やメンタルケアの大切さを感じ、保健師を志すようになりました。
元々、自分が話すより、話を聞くことの方が好きで、人からは「聞き上手だね」といわれることがよくありました。このコミュニケーション能力を活かし、構えずに気軽に相談していただけるような保健師を目指したいです。
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上記は産業保健師を志望する方向けの例文になります。産業保健師は疾病の予防や鬱などのメンタル不全から復職された方のフォローや、職場の理解を促す活動をすることも必要となってきます。
時にはカウンセリングなどをおこない、社員のモチベーションを上げることで、生産性を向上させるのが産業保健師の担う役割です。コミュニケーション能力が高く、話しやすい雰囲気がある、守秘義務をきちんと守るなど人としての信頼感があるところをアピールしていきましょう。
例文③
私は予防という観点から多くの人の健康を守りたいと考え、保健師を志望しました。御社では定期健診の数や項目が多く、かつ従業員もたくさんいます。多くの方の健康面を支えることで関係する全ての人の幸せを守り、経済活動も守りたいと考え、御社を志望しました。大学時代はサッカー部のマネージャーをし、相手が何を求めるかを考え、常に先回りして行動することを心がけました。
御社でも検診にいらっしゃった方の考えを先回りして読み、どのような不安を抱えているか想像しながら働くことで、円滑に業務を進めたいと考えています。
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例文の③では、なぜ保健師になりたいと思ったのかを最初に提示しています。その上で企業で働きたいと思った理由も述べられており、志望度の高さがアピールできているでしょう。企業での働き方にも言及できていて、説得力のあるアピールができています。
例文④
私は看護師からさらにキャリアアップして働きたいと思い、保健師を志しました。起きた病気に対処する看護師と違い、病気を未然に防ぐ働きをする保健師は、多くの人を苦しみから遠ざけることができると考えています。御社を志望したのは、健康意識が非常に強く、社内での検診頻度が高いからです。
大学時代は居酒屋でアルバイトを経験し、コミュニケーション能力には自信があります。検診に限らず、様々な場面で社員の方と接し、日常的に観察することで、より適切な健康指導をして活躍したいと考えています。
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例文④では、看護師のキャリアアップとして保健師を目指したことが述べられています。自身の将来像を明確にできており、かつ向上心の高さをアピールできているのは評価できるポイントでしょう。
例文⑤
病気の予防という健康における根本部分を見つめる仕事をしたいと思い、保健師を志望しました。私の祖父は昔から病気がちで、病院通いの日々が続いており、とても辛そうでした。祖父が病気になるたびに早く治ってほしいと思いましたが、ある時単に治るだけではなく、そもそも病気にならなければいいのだと思い、保健師という仕事に興味を持ちました。
御院を志望したのは、予防医学に関する理解が深く、先進的な研究が進められているからです。大学時代に剣道部の活動で身につけた粘り強さを活かし、就職後は粘り強く学びながら、多くの人の健康を守れる保健師を目指します。
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例文⑤では、自身の過去の経験から、保健師を志望した理由を明かしています。経験とリンクさせることで志望度の高さがアピールしやすく、説得力も持たせられているでしょう。
例文⑥
高齢化社会を迎える日本において、これから重要なのは治療ではなく予防だと思い、保健師を目指しました。高齢化の進行によって病院や医師が足りなくなることが心配されていますが、そもそも健康に過ごせる人が多いなら、この問題は解決できるように思えます。御院を志望したのは、予防医学を中心とした科があり、地域に向けた健康指導を丁寧に行っているからです。
大学時代は世界中を旅して多くの人と出会い、コミュニケーション能力を身につけました。御院でもコミュニケーション能力を活かし、多くの人に健康意識を持つ大切さを周知して、健康な地域づくりに貢献したいと考えています。
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例文⑥では日本の社会構造に触れながら、保健師を志望した理由を述べています。高齢化社会で予防医学は注目されているため、社会の流れをきちんと汲めているとして評価してもらいやすいでしょう。
保健師の志望動機の書き方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
保健師の志望動機NG例文3選
志望動機をよりブラッシュアップするためには、どのような内容だとNGと判断されるのかを知ることも大切です。よい例文だけではなく、悪い例文も知っておくことで、どこを改善すべきかを判断できるようになります。NG例文も参考にして、自分が作成した志望動機と重なる部分がないかチェックしていきましょう。
NG例文①
私は医療の仕事に興味があり、保健師を目指しました。通常の医療の仕事が病気を治すことであるのに対し、保健師は病気を予防するという目のつけどころの違いに惹かれました。病気を完全に予防することができるなら、多くの人がより健康でいることができ、医療は大幅に発展すると思います。
今後は治療よりも予防が注目されるとも感じています。今後必要とされ、かつ最新の医療分野で働き、大きく成長したいと思い、保健師の仕事を志望しました。
例文①では、単に興味があるとして保健師を志望した理由を述べています。志望理由が興味本位でしかなく、真剣度が伝わらない点がNGポイントです。志望度のアピールが全体的に曖昧で、芯となる志望理由を伝えられていない点もマイナスでしょう。
NG例文②
私は多くの人の健康を守りたいと考え、保健師の仕事を志望しました。人が幸せに生きていくためにもっとも重要なのは、健康であると私は考えます。どれだけお金や名誉があっても、健康でなければそれらの恩恵を受けることはできず、人生の充実度は下がってしまいます。反対に健康でさえあるなら、どのようなことにでも挑戦でき、人生の充実度は高くなるのではないかと考えます。
多くの人の健康を支え、間接的に人生の充実度を高めることで、人々の幸せを勝ち取りたいと考えています。
例文②のNGポイントは、志望度の高さを明確にできていない点です。健康を守ることが大切としていますが、持論が展開されているばかりで、なぜ大切なのかという明確な理由に触れられていません。また、志望理由そのものが曖昧であり、全体的なアピール力は低いでしょう。
NG例文③
私は病気の治療をサポートすることで、多くの人の健康を守り、結果的に幸せを運べる存在になりたいと思い、保健師の仕事を志望しました。私の祖母は病気がちであり、いつも「人間、健康が一番」と言っていました。病気に苦しむ祖母の姿を見るのは忍びなく、その苦しみから救ってあげたいと思ったことが、保健師を目指したきっかけです。
祖母のように病気に苦しむ人の治療に携わり、サポート役として機能することで、多くの人の健康を守って活躍します。
例文⑥では保健師でなければならない、明確な理由が述べられていません。医療職や治療に関する気持ちは述べられているものの、看護師のように別の職種でも通用する内容になっている点がNGです。
志望動機は選考結果に大きな影響を与える
どの職業を希望される方にも共通しますが、志望動機はシンプルなようでいて、実は自己分析がしっかりできていないと作成できません。自分のことを知らずして、やりたいことは語れないからです。保健師を希望される方の場合、目指す職務を行政、企業、学校、病院、どの産業で活躍していきたいのかをはっきりさせてから「なぜそこを目指すのか」を作成していくとよいでしょう。
志望動機と応募先での職務がずれていると、ミスマッチと捉えられて選考に不利になります。応募先の理念や職業理解はきちんとした上で面接に臨みましょう。職業的に人の不調などをヒアリングする、健康維持の為に指導する、といった対人業務が大半を締めます。志望動機を解りやすく説明できるかどうかが、コミュニケーション能力の評価にも繋がっていきますので頑張りましょう。