業界研究

【運送業界とは】主な業務内容や動向、主要企業の特徴を解説

近年需要が高まっている運送業界

世の中には様々な業界がある中で、運送業界は毎年志望する人も多く、人気の業界の一つです。どこか安定しているイメージや、将来性があるような印象があることから、憧れの業界とされています。

しかしながら、漠然と「安定しているから」「将来性があるから」というイメージで選考に進んでしまうと、理想と現実のギャップに苦しんだり、選考で落とされてしまう可能性もあります。

本記事では運送業界の基礎知識から企業の特徴まで解説しています。運送業界の業務内容や動向を知ることで、業界研究や企業研究を進めることができ、自分に合っているかどうか判断することができます。

運送業界の基礎知識から内定を得るためのポイントまで理解し、就職活動を優位に進めましょう。

運送業界とは

運送業界は「物や人の流れ」を扱う業界で、商品の運搬を行い生産者から消費者まで届ける仕事や、人を目的地へ届けるような仕事を行っています。

例えば、石油や天然ガスのような資源などの運搬で主に「BtoB」で活躍する海運の日本郵船があげられます。また、顧客の自宅への輸送などトラックや車を用いた輸送しかできないような地域への輸送が得意で、「BtoC」「CtoC」で活躍する陸運の日本通運などがあります。

また公共交通機関である「バス」や「鉄道」、旅行の際に使用される「航空機」や「旅客船」があります。

このように「運送業界が何を行っているのか」「どのように利益を出しているのか」を知ることで、運送業界の業界分析や企業分析がしやすくなるため、自分に合った企業選びがしやすくなるでしょう。

運送業界のビジネスモデル

運送業界のビジネスモデルを表した図

運送業界は、生産者から消費者に商品を届けるために運送を行うビジネスモデルの「貨物輸送」と、消費者を目的地まで輸送するビジネスモデルの「旅客輸送」に分けることができます。

「貨物輸送」は、生産者や依頼者に商品の輸送や配送を依頼され、その仲介手数料や輸送料、配送料で収益を出す仕組みであり、「旅客輸送」の場合は、輸送費用として収益を得る仕組みとなっています。

また「貨物輸送」「旅客輸送」ともに、輸送手段が「陸運」「海運」「空運」「鉄道」と幅広く、扱う商品によって様々な形で我々消費者に届けられます。

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運送業界の2つの業種

運送業界の2つの業種を表した図

次に「運送業界の業種」について解説します。先述の通り、運送業界は「貨物輸送」と「旅客輸送」に分けることができ、それぞれに「陸運」「海運」「空運」「鉄道」といった輸送手段があります。

それぞれの違いを理解しておかなければ、運送業界が行っている仕事を理解することが難しいでしょう。そのため各輸送手段の違いを、しっかりと理解しておきましょう。

1.貨物輸送

貨物トラック【陸運】

「貨物トラック」とは、主にトラックを用いた陸上輸送のことをさします。宅急便の荷物や引っ越しなど、あらゆる運送サービスを支える輸送手段です。

貨物輸送における陸運の特徴としては、他の輸送手段と比べて細かなニーズに対応できるといったところです。例えば、顧客の自宅への輸送など、トラックや車を用いた輸送しかできないような地域への輸送が得意です。

反対に劣っている点としては、他の輸送手段と比べて大量輸送と長距離輸送ができないところがあげられます。

そういった物流における細かなニーズに応えることができるといったことから、「陸運」は消費者に一番近い「配送」を担っている場合が多いです。代表的な陸運会社は日本通運、日本郵政、ヤマトHD、SGホールディングス、日立物流などが該当します。

「陸運」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「陸運」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

貨物航空【空運】

「貨物航空」とは、主に飛行機を用いた航空輸送のことをさします。旅客者の荷物輸送や競走馬や像などの動物輸送、F1マシンや試作車などの特殊車両輸送を行っています。

貨物輸送における空運の特徴としては、他の輸送手段と比べて輸送時間が早く長距離輸送ができるといったところです。例えば小型かつ軽量な精密機器や「生花」や「生鮮食品」なので劣化が進みやすい商品の輸送に便利です。

反対に劣っている点としては重量がある商品が輸送できない点や、消費燃料の多さにより輸送コストが高いといった点があげられます。航空機の制限重量は同じ長距離輸送が得意な船舶と比べても軽く、また輸送燃料は景気によって変動を受けやすいことから景気が悪い際には海運に切り替えられる場合があります。

そういった意味で、「空運」はとても大きな一長一短がある輸送手段と言えます。代表的な空運会社はANAホールディングス、日本航空、近鉄エクスプレス、名鉄運輸、AIRDOなどが該当します。

「空運」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「空運」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

貨物船【海運】

「貨物船」とは、主に船舶を用いた海上輸送のことをさします。貨物船には様々な貨物を運ぶコンテナ船や、石油やLNGのようなエネルギーを運ぶタンカー船などがあります。

貨物輸送における海運の特徴としては、他の輸送手段と比べて大量の商品や重量の重い商品を長距離輸送できるということです。例えば石油や天然ガスなどの資源や自動車や、重電機のような超重量の商品を大量に輸送することができます。

反対に劣っている点としては、輸送に時間がかかるところです。石油輸出国であるサウジアラビアから日本まで石油を輸入しようとする際、原油の積み下ろしに5日、航海で割いてでも20日かかるとされています。航空機では石油は輸送できませんが、2日あれば到着することができるでしょう。

船舶でしか輸送できない商品も多いため、とてもニーズがある輸送手段であるといえます。代表的な海運会社は日本郵船、商船三井、川崎汽船、NSユナイテッド、飯野海運などが該当します。

「海運」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「海運」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

貨物鉄道【鉄道】

「貨物鉄道」とは、主に貨物列車を用いた貨物輸送のことをさします。貨物鉄道では、様々なサイズのコンテナが運べるようになっており、石油のようなエネルギーから冷凍食品まで輸送できます。

貨物輸送における鉄道の特徴としては、他の輸送手段と比べて時間通りに商品が輸送でき、環境にも優しいというところです。貨物列車では、定められた走行速度とルートによって時刻表通りの運行ができます。また電化された区間はCO₂の排出量がなく地球環境に優しい輸送ができます。

反対に劣っている点としては陸運に比べ運送時間や頻度の融通がきかないところです。運行時間が正確に決まっているからこそ、様々な企業のニーズに100%応えきれないというデメリットが存在します。

しかし近年のモーダルシフトによって注目されており、今後変革の可能性を秘めた輸送手段となっています。後述しますが、モーダルシフトとは輸送による環境負荷を考慮し、トラックによる輸送から鉄道や船舶による輸送に転換するといった取り組みで、現在多くの企業で実施されています。代表的な鉄道会社は日本貨物鉄道が該当します。

「鉄道」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「鉄道」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

2.旅客輸送

旅客バス・タクシー【陸運】

「旅客バス・タクシー」とは、主にバスやタクシーを用いた陸上輸送のことをさします。ちょっとした移動から通勤や通学など、人々の様々なニーズに対応する輸送手段です。

旅客輸送における陸運の特徴としては、他の輸送手段と比べて細かなニーズに対応できるといったところです。例えば、バスやタクシーは飛行機や船に比べれば、個人が希望する目的地の近くへ運んでくれます。

反対に劣っている点としては、他の輸送手段と比べて大量輸送と長距離輸送ができないところがあげられます。

そういった、細かなニーズに応えることができるといった特徴があります。代表的な陸運会社は神奈川中央交通、西日本鉄道、東京都、国際自動車、日本交通、グリーンキャブなどが該当します。

「陸運」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「陸運」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

旅客機【空運】

「航空機」とは、主に飛行機を用いた航空輸送のことをさします。旅行や遠征、出張など、長距離移動をする際に活躍する輸送手段です。

旅客輸送における空運の特徴としては、他の輸送手段と比べて輸送時間が早く長距離輸送ができるといったところです。例えば海外旅行をする際は、航空機を利用する人がほとんどでしょう。

反対に劣っている点としては、輸送コストが高いといったところがあげられます。航空機はその他の旅客手段に比べ運賃が高く、また輸送燃料が景気によって変動を受けやすいことから景気が悪い際に高騰化することがあります。

そういった意味で、「空運」は非常に大きな一長一短がある輸送手段と言えます。代表的な空運会社はANAホールディングス、日本航空、近鉄エクスプレス、名鉄運輸、AIRDOなどが該当します。

「空運」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「空運」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

旅客船【海運】

「旅客船」とは、主に船舶を用いた海上輸送のことをさします。旅客船は、観光需要や島国を結ぶ輸送手段として活躍しています。

旅客輸送における海運の特徴としては、他の輸送手段と比べて多くの人を長距離輸送できることや島国の交通手段の要であるということです。例えば関東から九州へ車で行きたい場合、自分での運転だけで往復することは大変です。しかし自動車も積載できる船舶であれば、ストレスを感じることなく九州へたどり着くことができるでしょう。

また沖縄や瀬戸内海のような、小島が多い地方では、通勤や通学の輸送手段としても、旅客船が活躍します。

反対に劣っている点としては、輸送に時間がかかるところです。九州から関西に船舶で移動した場合、1日程度の時間を要してしまいます。新幹線であれば、博多駅から新大阪駅まで2時間30分で行くことができます。

旅客船でしか輸送できない地方もおおいため、ニーズがある輸送手段であるといえます。代表的な海運会社は郵船クルーズ、商船三井客船、日本クルーズ客船などが該当します。

「海運」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「海運」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

旅客鉄道【鉄道】

「旅客鉄道」とは、主に列車を用いた鉄道輸送のことをさします。旅客鉄道は、通勤や通学での利用や、長距離輸送としての需要も高い輸送手段となります。

旅客輸送における鉄道の特徴としては、他の輸送手段と比べて時間通りに人を輸送でき、環境にも優しいというところです。旅客列車では、定められた走行速度とルートによって時刻表通りの運行ができます。また電化された区間はCO₂の排出量がなく地球環境に優しい輸送ができます。

反対に劣っている点としては旅客手段に比べ、運送時間や頻度の融通がきかないところです。運行時間が正確に決まっているからこそ、様々な顧客のニーズに100%応えきれないというデメリットが存在します。

代表的な鉄道会社は、東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、西日本旅客鉄道、近畿日本鉄道などが該当します。

「鉄道」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「鉄道」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

運送業界の3つの職種と業務内容

運送業界の3つの職種と業務内容を表した図

次に運送業界の業務内容について解説します。運送業界は、「物の流れ」や「人の流れ」を扱う業界で、商品の運搬を行い生産者から消費者まで届ける仕事や人を目的地に運ぶ仕事を行っています。

その中でも「営業」「管理」「SD職(セールスドライバー、宅配員)、パイロット、航海士、電車運転士」と3つの職種と仕事内容に分かれています。3つそれぞれが重要な役割を担っていますので、しっかりと理解し自分に合った仕事かどうか確認しましょう。

1.SD

生産者から受注した商品を実際に消費者に届ける仕事になります。輸送や配送の業務が運送業界のメイン業務であり、各企業でコスト削減や効率化をはかりながらしのぎを削っています。

例えば、輸送する手段としては「陸運」なら長距離トラック、「空運」なら航空貨物、「海運」なら貨物船、「鉄道」貨物列車があり、配送では「陸運」の宅配トラックがメイン手段として機能しています。

また物流センター等の大きな施設に届けることを「輸送」、顧客の自宅のように個別の消費者に届けることを「配送」と言います。以下、それぞれの職種に就くうえで必要になる免許を記載していますので、ご参照ください。

SD職に就くうえで必要になる免許
・普通自動車免許
・中型自動車免許
・大型自動車免許
・牽引免許
・玉掛作業者
・フォークリフト運転技能者
・危険物取扱者
・運航管理者

パイロットに就くうえで必要になる免許
・操縦士技能証明
・航空身体検査証明

航海士に就くうえで必要になる免許
・海技士免許

電車運転士に就くうえで必要になる免許
・動力車操縦者運転免許

2.営業

運送業界の営業では、主に法人営業が主流です。物流会社のサービスを活かし、「輸送手段の提供」や「倉庫での保管」を行うことで、「輸送賃金の見直し」や「生鮮食品の保管」といった顧客の物流課題を解決します。

近年、Amazonや楽天等のECサイトで商品を販売しつつも、自社内で商品を保管できない企業が増えてきました。ECサイトとは、自社の商品やサービスを、店舗でなくwebサイトで販売するサイトを指します。

このような自社内に保管機能を持たない企業は、物流会社へ保管業務を委託し、物流センターに商品を納入します。

また、その商品を物流センターから各ユーザーに配送するといったケースが増えてきました。このように運送業界の営業は、保管機能がない企業への新規開拓や既存顧客のサポートを中心に行う業務となります。

また保管とともに、「配送手数料割引」などのDM(ダイレクトメール)を配信することで、輸送手段提供の新規開拓営業を行うケースもあります。このように運送業界の営業の形は、多様化しているといった特徴があります。

「営業」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「営業」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。

3.管理

管理は、生産者から預かった商品を管理する職種です。商品が生産者から消費者に渡るには様々な工程があります。

管理の仕事
・生産者の元へ商品を受け取りに行く
・受け取った商品を倉庫に保管する
・保管した商品を出荷する

具体的な名称としては、商品が適正な状態かどうかを検査する「検品」、商品が適切な方法で運送の準備するための「梱包」、その他「仕分け」「ピッキング」「荷役」「商品管理」など多岐にわたります。

運送業界で一番作業量が多い業務となっており、人員コストがかかると言われています。そのため近年では、これら業務を全て機械やシステムによる自動化にする動きが進んでおり、コスト削減や従業員の負担軽減がはかられている業務になっています。

あなたが運送業界に向いているか、適性を確認してください

就活では、自分に適性のある仕事を選ぶことが大切です。向いていない職業に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまいます

そんな時は「適職診断」を活用して、志望する職業と自分の相性をチェックしてみましょう。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、ぴったりの職業を診断できます。

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運送業界の動向

次に運送業界の動向について解説します。運送業界の動向について理解することで、「業界全体ではどんな課題があり、どのような人物を求めているのか」「今後の展望により、就職することでどのようなメリットやデメリット」が分かります。

そのため、自分にあった企業を探すための業界研究や企業研究を進めることができます。運送業界を理解するためにも、現状の課題や今後の行方にもしっかり注目しておきましょう。

今までの変革

運送を始めとした「物流」の概念が登場したのは戦後と言われており、当時の物流先進国であったアメリカを参考にし、日本の物流インフラの整備が始まりました。当時の日本はオリンピックや万博の開催により、高度経済成長期であったため、大量生産と大量消費によりどんな商品も作れば作るほど売れる状況でした。

そのような状況から生産者はものづくりに、流通に関わる企業はものを売ることに専業することにより、「物流」という概念がでてきました。例えば人力で行なうことが多かった荷役を機械化へシフトしたり、物流センターや倉庫といった物流拠点が整備があげられます。生産から消費に繋がる効率的な流れが「物的流通」という言葉に訳され、のちに「物流」と呼ばれるようになりました。

このように運送業界は生産者と密接に関わる業界である、多くの人と関係を構築しなくてはならないため、現在でも「マネジメント能力」や「コミュニケーション能力」をもった人物を求める傾向があります。

近年のトレンド

近年のトレンドを表した図

人手不足と労働環境問題

運送業界は現在、後述するEコマース市場の拡大の影響により、深刻な人手不足であると言われています。トラックドライバーのような現場人員や、事業を運営する従業員も長時間労働を強いられています。

そのため人手不足を解消するために、積極的な採用と、従業員が気持ちよく働けるための環境整備、労働の効率化が推進されています。

例えば、全日本トラック業界が進めている働き方改革プランが挙げられます。長時間労働を抑制するために、労働生産性を上げるための取り組みに注力し、2021年度から具体的な達成目標が掲げられています。

Eコマース市場の拡大

運送業界が人手不足や長時間労働になってしまう原因は、Eコマース市場の拡大が影響しています。Eコマースとは電子商取引のことで、Amazonや楽天のようなインターネットを介して契約や決済などを行う取引形態です。

このEコマース市場の拡大により、宅配便の取扱数が増えています。イーコマブログ」によれば、2019年の市場規模は前年比108.09%の10兆515億円であり、5年前の2014年と比較すると約1.5倍に拡大しています。

インターネットやスマートフォンの普及により、Eコマース市場は拡大傾向にあります。実際に、物をネットで注文し、自宅まで配達してもらった経験がある人も多いでしょう。このように、Eコマース市場が拡大するに伴って、宅配便の取扱数も増加し、運送業界への負担が大きくなっています。

また宅配便取扱数の増加に伴い、人員を確保が追いついていないことも課題です。先述の通り、運送業界では人手不足が大きな課題となっています。そのため、これらの問題を解決するために、労働環境を大きく改善する必要に迫られている現状があります。

今後の行方

今後の行方を表した図

運送需要の拡大による海外展開

上記のような現状がある一方で、運送需要はますます拡大しているとも言えるでしょう。そのため各運送会社は、積極的な海外展開を行い、収益拡大を狙っています。「ヤマト運輸」では、2010年にシンガポール、上海進出し、現在では香港やマレーシアに拠点をかまえ、アジアへの本格進出を果たしています。

このように、運送会社が海外展開する要因としては、「国内市場の縮小」です。現在、日本では少子高齢化に伴う人口減少が続いています。「総務省 平成28年度版 情報通信白書「人口減少社会の到達」」によれば、日本の人口は2005年あたりをピークに年々減少しています。2050年には日本の人口は1億人を切る予測となっています。今後もさらなる人口の減少が予想されます。

また「海外市場の大きさ」も、海外進出の要因となっています。日本の人口は約1億3000万人ですが、世界全体の人口は約75億人です。そして日本は人口が減少傾向にあるのに対し、世界の人口は増え続けています。

現在人口が大きく増加している地域は、インド、ナイジェリア、エチオピア、インドネシアです。これらの国は人口増加に伴い、さらなる市場規模の拡大が見込まれており、2050年時点で世界の人口の1位はインド、2位は中国、3位はナイジェリアとなると言われています。

このように、国内の人口が減少し、消費が少なくなる日本よりも、現在の海外の市場規模の大きさや今後の見込みから、今の時期から海外進出を目指す日本の運送会社が多くなっています。

IoT技術の活用

「IoT」とは、「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と言われることが多く、身の回り様々な製品が、インターネットとつながる技術です。運送業界におけるIoTは、「出入庫作業を自動化し仕分けを行う設備」が代表的です。

例えば大和ハウスが導入しているAIを活用した物流センターでは、作業員の命令に合わせてロボットがピッキングエリアに棚を自動で搬送し、棚の最適配置まで行います。また配車システムと連動することにより、荷物の積載率を高め、効率よくトラックに積載するといった特徴もあります。

このように受注から配送までの様々なシーンを、「IoT」の技術により、最適化されています。IoT技術を活用することで、「商品状況の確認」「リアルタイムでの情報収集」「クラウド上での在庫管理」ができるようになり、効率的な配送が実現されています。

運送業界の業績と待遇

運送業界の業績を表した図

業績規模 12.8兆円
平均年収 576万円
平均勤続年数 約18.3年

図では、「業績規模」「平均年収」「平均勤続年数」のカテゴリーのうち、それぞれトップの「卸売」「総合商社」「電力」の業界と運送業界を比較しています。

業界動向リサーチの「運送業界の現状・動向・ランキング・シェアを研究-業界動向サーチ」によれば、航空業界は毎年順調に業績を伸ばし続け、現在では業界規模12兆8,000億円となっています。業績の伸び率は+4.3%であり、142業界65位と高くなっています。

一方平均年収は576万円となっており、総合商社と比べると低いものの、サラリーマンの平均年収が400万円程度と言われているため、平均と比べると高めとなっています。

また平均勤続年数は18.3年となっています。国税庁が公表している「平成29年分 民間給与実態統計調査」によれば、全体の平均勤続年数は12.1年であるため、平均より高い勤続年数であることが分かります。

運送業界の主要企業の売上高ランキング

運送業界を志望するのであれば、どの企業を志望するのかを決めていくために、企業ごとの特徴や強みを調べる必要があります。

就職する企業と自分の目指すところが違えば将来が全く違うものになりますので、企業を正しく知り、就活を進めていきましょう。就活では業界研究だけではなく、企業研究も大切ですので、運送業界の主要な企業についてもしっかりと、理解を深めていきましょう。

陸運会社の売上高ランキング

  1. 1 日本通運2兆0,803億円
  2. 2 日本郵政2兆0,698億円
  3. 3 ヤマトHD1兆6,301億円
  4. 4 SGホールディングス1兆1,734億円
  5. 5 日立物流6,722億円
  6. 6 セイノーHD6,271億円
  7. 7センコーグループHD5,770億円
  8. 8近鉄エクスプレス5,445億円
  9. 9山九4,102億円
  10. 10鴻池運輸3,108億円

引用元:運送業界 売上高ランキング(2019-2020年)|動向等を研究-業界動向サーチ

空運会社の売上高ランキング

  1. 1ANAホールディングス1兆9,742億円
  2. 2日本航空1兆3,859億円
  3. 3近鉄エクスプレス5,445億円
  4. 4名鉄運輸1,170億円
  5. 5AIRDO445億円
  6. 6ソラシドエア418億円
  7. 7スターフライヤー404億円

引用元:航空業界 売上高ランキング(2019-2020年)|動向等を研究-業界動向サーチ

海運会社の売上高ランキング

  1. 1日本郵船1兆6,683億円
  2. 2商船三井1兆1,554億円
  3. 3川崎汽船7,352億円
  4. 4NSユナイテッド海運1,484億円
  5. 5飯野海運891億円
  6. 6栗林商船459億円
  7. 7川崎近海汽船443億円
  8. 8明治海運438億円
  9. 9乾汽船217億円
  10. 10共栄タンカー125億円

引用元:海運業界 売上高ランキング(2019-2020年)|動向等を研究-業界動向サーチ

鉄道会社の売上高ランキング

  1. 1 JR東日本2兆9,466億円
  2. 2 JR東海1兆8,446億円
  3. 3 JR西日本1兆5,082億円
  4. 4 近鉄グループHD1兆1,942億円
  5. 5 東急1兆1,642億円
  6. 6 阪急阪神HD7,626億円
  7. 7東武鉄道6,538億円
  8. 8名古屋鉄道6,229億円
  9. 9西武HD5,545億円
  10. 10小田急電鉄5,341億円

引用元:鉄道業界 売上高ランキング(2019-2020年)|動向等を研究-業界動向サーチ

運送業界について理解し就活に挑もう

運送業界は、宅配便需要の急増によって、業績が順調に推移している業界です。しかし、仕事量は増えているにも関わらず、人手が確保できていないことが問題として挙げられます。今後も業界規模を拡大させていくためには、人手不足を解消させることが必須といえます。

そのため、働き方改革が叫ばれており、変革の最中にある業界です。業界内では今後もさまざまな変化が予想されるため、こまめに業界の情報を更新して、就活攻略に役立てていきましょう。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

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