業界研究

【パン業界徹底研究ガイド】現状と動向など就活に役立つ情報を紹介

パン業界とは

現代の日本の食卓にとって、パンは米と並び、無くてはならない「主食」の一つになっています。そのパンや小麦粉を使った食べ物などを作り、さまざまな形で市場に提供しているのがパン業界です。

パンが好き・パンを作りたい・パンの流通に携わりたいなど、この業界を志望する人の志望理由はさまざまです。現在のパン業界の動向、トピック、主要企業などの基本的な情報を把握し、就職活動に役立てましょう。

パン業界の概要

「パン業界」と一口に言っても、大手の製パンメーカーから街のベーカリーショップに至るまで、規模や業務内容はさまざまです。大手企業では食パンや菓子パンの製造だけではなく、穀物原料の研究なども行っています。パンを作ってからの流通経路は、直営店のほか、各スーパーマーケット・コンビニ店などに卸して消費者の手元に届けるという方法が多いです。

主要商品である食パンのほか、近年は調理パンのニーズが高まってきています。キッチンで調理をすることなくそのまま食べられるため手間が省け、忙しい世代や一人での食事・料理をするのに苦労する高齢世代に重宝されているのです。人口減少に伴い消費が減少するのではないかという声もある業界ですが、新たな需要を開拓しようと日々研究を重ねています。

パン業界の業績推移について

  • 業界規模 1兆2,749億円
  • 平均年収 463万円
  • 平均継続年数 13.7年

近年のパン業界は、素材や製法にこだわる傾向があります。これは、国産小麦に対する消費者の需要が高まっているためです。そのため、製粉業界とパン業界で協力をし、国産の特定ブランドにこだわった商品の提供を始めました。従来どおり良品廉価であると同時に、少し高価であってもプレミアム感を求める需要にも応じる傾向があると言えます。コンビニエンス業界ではサンドイッチのパンを見直し、市場が拡大しました。また「低糖質」「アーモンド」「胡桃」などのキーワードで、健康志向を訴求しています。

このように、ただパンの種類を増やすのではなく、一つ一つの商品を見直し品質をアップすることによって、市場規模は微増ではありますが、堅調に推移しています。

食品業界全体の動向について、知りたい人はこちらの記事もチェックしてみてください。

パン業界の細かい職種分類について

  • 営業
  • マーケティング
  • 商品開発
  • 研究
  • エンジニア
  • 生産

営業・マーケティングの仕事は、市場と会社を繋ぐことです。製造したパン類を販売するために、既存の顧客へのフォローや新規の取引先を開拓します。そして営業やマーケティングがつかんだ情報は、商品開発と研究に回されます。ここでは、どのような客層にどのようなものが売れているのか、そしてこれからの売れ筋を考えて商品開発をするのです。新しいブレンドの小麦粉とパンとの相性を研究することも大事な仕事です。

エンジニアは、より効率的に低コストに、おいしいパン類を製造するための機械を開発し、メンテナンスをします。その機械で実際にパンを生産するのが、生産現場です。

このほか、事務、社内で販売ラインが整っている会社であれば店舗運営、海外事業部などの職種もあります。

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パン業界の動向

パン業界では、平成16年から平成23年までの売り上げが若干の増加傾向にありました。その後、平成23年から25年にかけて減少、平成25年から27年に再び増加となっています。近年の日本人の主食は大きく変化していて、一般家庭におけるパンの消費額がコメを上回ったとされています。

背景としては、若年層のコメ離れや、朝にパンを食べる家庭が増えてきている影響があります。主食に占める割合の調査では、昭和58年に57.2%となっていたコメ類が、平成15年には42.4%に下落となりました。一方のパンは、21.2%から34.4%へと大きく上昇しています。平成23年から26年頃までは、小麦価格の高騰などの問題もありましたが、近年では落ち着いています。

パン業界の課題

近年のパン業界は、コメ離れや小麦の価格下落などがあり、安定していると考えられます。しかし、多くの日本企業が海外進出を積極的におこなっているなかで、日本のパンメーカーは海外市場に非常に消極的な姿勢をとっています。

パン業界大手の山崎製パン、フジパングループ本社の海外売上高比率は、10%未満です。第一屋製パン、日糧製パンにおいても、海外売上高はゼロと、国内だけの売り上げに頼っている状態です。これから先、人口が減少していくと、国内のパン市場も縮小傾向になると予測されています。

消費者の数そのものが減っていくことになり、市場の成長も見込めないといえます。今後のパン業界は、売り上げを伸ばしていくためにも、積極的な海外への展開が大きなカギとなりそうです。

パン業界の最新ニュース

パン業界最大手の山崎製パンが、自社のウェブサイトに「イーストフード、乳化剤不使用等の強調表示について」という記事を公開しました。イーストフードと乳化剤は、パン作りに使われる食品添加物のことです。

イーストフードは、ふっくらしたパンになるために使われます。乳化剤は、パン生地の保水性を高めて柔らかさを保つためのものです。この2つの添加物は、インターネットなどで食べない方がよいといわれていますが、山崎製パンでは危険ではないと主張しています。

他社のパンに「イーストフード・乳化剤不使用」と書かれていても、同じような添加物が入っている場合もあり、山崎製パンはわざわざ強調して表示する必要はないのではと訴えています。この添加物の強調表示については以前から問題視されていて、日本パン工業会でも議論が始まりました。

主要企業5選紹介

パン業界は、いわゆる「製パン業者」が売り上げのほとんどを占めています。チェーンや大企業ならではの資金力、販売力などの他に、大量生産を可能としている事業力が強いためです。主要企業はどのような会社でどのような事業を行っているのか、上位の5社を紹介します。

各企業とも販売ルートが独自であったり、製造するパンの方向性もそれぞれ違います。企業をよく研究し、就職活動に役立てるようにしましょう。

山崎製パン株式会社

  • 企業名 山崎製パン株式会社
  • 代表取締役社長 飯島 延浩
  • 従業員数 単独18,628名(グループ連結27,180名)
  • 設立年月日 1948年(昭和23年)6月21日

山崎製パン株式会社は、パン業界において実に75%近くのシェアを握る一大企業です。食パン・菓子パン・食事パンをはじめとしたいわゆる「パン」類から、ショートケーキ・和菓子に至るまで、スーパーやコンビニには必ずと言っていいほどに同社の製品が販売されています。「良品廉価」「顧客本位」を理念に、業界一位の座に甘んじることなくさらに、おいしいパンを消費者にと願い続けているのです。

採用は「生産・研究部門は理系学部」というように、学部によって募集の事業部が異なります。ただし営業はこの限りではないので、営業をやってみたいと思う人はチャレンジしてみるのも良いでしょう。大企業なので昇給は安定、福利厚生に関してもしっかりしていますが、女性の管理職はまだ少ない会社です。

敷島製パン株式会社

  • 企業名 敷島製パン株式会社
  • 代表取締役社長 盛田 淳夫
  • 従業員数 3,914名
  • 設立年月日 1920年(大正9年)6月

敷島製パン株式会社は、「Pasco(Pan Shikisgima Company)」のブランドで、特に食パンにおいて高いシェアを誇っています。もっちりとした仕上がりになる湯種製法の「超熟食パン」のシリーズを中心とした食パンと、最近では国産小麦の「ゆめちから」に力を入れ、素材にこだわったパンを売りにしている会社です。営業、技術、生産のラインで、日々「安全なおいしさ」と品質を追求しています。

研修としては、入社時に集合研修とパンの製造基礎研修があります。女性の働きやすさは、工場と総合職では異なるので、自分がどのような仕事をしたいのか考えて企業研究をしましょう。工場は時短が可能ですが力仕事があり、総合職の事務や営業は通常の残業があります。近年女性の管理職も増えてはきていますが、まだ少ない状況です。

フジパングループ本社株式会社

  • 企業名 フジパングループ本社株式会社
  • 代表取締役社長 安田 智彦
  • 従業員数 単独3800名(グループ連結16,600名)
  • 設立年月日 1951年(昭和26年)2月6日

フジパングループ本社株式会社は、「本仕込み」「ネオバターロール」が代表的な商品の会社です。食パンの他に菓子パンの開発・販売も多く、自社内に販売ラインはありませんがその代わり、コンビニなどに商品を多く卸しています。子どもに人気のキャラとのコラボも多く、なじみの深いパンがたくさんあります。

入社時からの研修は、順序立てて多数回行われています。通信講座の受講料は会社負担で、社員研修に力を入れていることが分かります。パートが多いという意味では女性が働きやすい職場ですが、管理職となるとまだ人数は少ないです。雰囲気が事業部によりかなり異なるので、企業研究が必要です。寮などの福利厚生はしっかりとしています。

株式会社神戸屋

  • 企業名 株式会社神戸屋
  • 代表取締役社長 桐山 健一
  • 従業員数 1371名
  • 設立年月日 1918年(大正7年)

株式会社神戸屋は、パンの他に洋菓子の製造販売、レストラン経営なども行っている会社です。ベーカリーの中では菓子パン・食パン・総菜パンの順に比率が高く、昔ながらの製法にこだわって製造をしています。トランス脂肪酸の低減に取り組むなど、健康にも気を遣っています。焼き立てが食べられる店舗販売も堅調です。各部署の女性社員が集まり、女性目線での新しい商品企画の機会もあります。

商品づくりにこだわりがあり、品質の向上に努めていますが、社内体制は年功序列でまだ保守的です。しかし、チャレンジできる人材を求めているところから、これから企業として変わっていく姿勢が見えます。製造の他にレストラン業もあるので、現場の多い企業でもあります。通信教育にかかる費用は、資格を取得すると会社が費用を負担してくれます。

株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所

  • 企業名 株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所
  • 代表取締役社長 髙木 誠一
  • 従業員数 1,953名
  • 設立年月日 1951年(昭和26年)

株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所は、旧「タカキベーカリー」が「アンデルセン」となった会社です。デンマークをテーマとし、デニッシュに強い、製パン・パンのチェーン店です。入社をすると、製パン・販売・営業・工務などの中からキャリアがスタートしますが、将来的には能力・適正に応じて店長などの責任者や企画、開発などを任されるようになります。グループ内で業種別に会社を完全に分けており、会社説明会までは全社一括ですが、採用選考はその会社ごとに行われます。内定者でのデンマーク旅行があり、現地のことを学ぶ機会があります。

一度退職をしても復職のためにカバー制度があったり、介護休業制度もあります。育児休業制度は男女問わずあるなど、福利厚生は手厚いです。

会社訪問の方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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パン業界研究のおすすめ書籍紹介

パン業界への知識を深めるためには、実際にその会社が製造しているパンを食べてみる他に、書籍をじっくりと読んでみるという方法もあります。業界やその企業についての知識がつけば、面接のときの話題にもなります。また「勉強しているな」という印象を面接官に与えることができます。

製パンという業種だけにこだわらず、穀物についての書籍や他の主食などの書籍も積極的に手に取るようにしてみましょう。

よくわかる食品業界(業界の最新常識)

『よくわかる食品業界』(業界の最新常識)という本は、食品業界のしくみについての基礎的なことが書かれた本です。食品を扱う業界・企業を目指すのであれば手に取り、頭に入れておきたい内容がやさしく丁寧に書かれています。図表もあり、視覚的に理解することもできます。データはどれも出どころが確かであり信頼できる内容ですが、発行が2007年の本のため、最新ではありません。この本で基礎的なことを学び、そこから興味を持ったことを深く掘り下げていくのが良いでしょう。

パン業界のことだけではなく食品業界全体のことが見えるので、視野が広くなります。繋がりのある業界が分かるので、興味深い一冊です。また、流通経路や地方経済のことなども書かれており、近未来の食品業界について考えることもできます。

食品業界の撫子―ビジネスで夢を実現した女性達

『食品業界の撫子―ビジネスで夢を実現した女性達』という本は、食品業界における女性のあり方について書かれた本です。食品業界の女性リーダー19人へのインタビューがまとめられています。会社のいちOL・お茶くみという仕事から代表取締役になった人、努力の結果社長に就任した人などの生き方、働き方が載っています。

業界や企業によっては、女性が活躍するにはまだ難しく、苦労をすることも多いです。しかし、意欲や働き方によっては管理職への登用も珍しくありません。食品業界内には、女性目線での需要を大事にしている業界もあります。食べ物に関しては女性がブームを作り出すこともあるからです。女性だけではなく、男性も読むことで刺激をもらえる一冊です。

パン業界を深く知って就活を有利に進めよう

パン業界の企業は常に「もっとおいしいものを」と努力し続けています。製法・材料・流通方法など、昔からあるものを大事にしながら新しいものを取り入れているのです。

主要企業だけではなく、地域に根ざした製パン企業などもあり、さまざまな選択肢があります。どのような働き方をしたいのか考え、パン業界への就職活動に役立てましょう。

志望動機の書き方について、知りたい人はこちらの記事もチェックしてみてください。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

多くの学生と企業をマッチングしてきた経験を活かし、『就活対策サイト「キャリアパーク!」が教える 「最高の会社」の見つけ方』(高橋書店)を出版。最高の会社を見極めるための基準や失敗しない企業選びの方法を紹介している。

全国民営職業紹介事業協会 職業紹介責任者(001-190515132-01459)

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