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資格は就活でどう役立つ?
【調査概要】
調査期間:2020年7月17日〜8月14日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査対象:2021年に大学を卒業予定のキャリアパーク(https://careerpark.jp/)会員
有効回答数:143名
就活を控えた学生の中には資格を取得する人もいます。しかし「資格は就活においてどのような働きがあるのか」「取得したほうがいいのか」と悩む学生も多いです。特に理系は専門職・技術職に就く場合が多く、資格が必要なイメージが大きいためより一層悩みます。
2021年卒業予定の就活生に向けたアンケート調査の結果、就職に向けて資格を取得した人は15%でした。8割以上の人が資格を取得することなく、就職活動に取り組んでいることになります。
結論から伝えると、資格は就活において必須ではありません。しかし、あれば必ず役立ちます。
この記事では、就活において資格はどのように役立つのかと、理系のおすすめの資格について解説します。参考にして、就活の成功に役立てましょう。
資格が理由で落とされることはない
企業の採用では、資格を持っていないことを理由に不採用となることはありません。
資格の取得は勉強にかなりの時間が必要になります。忙しい時期に焦って取ろうとすれば、かえって就活の失敗につながります。
ただし、資格は自分の能力をアピールする手段としては非常に有効なため、余裕のある時期に取っておくと就活に役立ちます。
ここでは、就活において資格の有無はどのように捉えられているのか、企業が就活生に求めているものは何かを、詳しく解説していきます。就活生にとって本当に必要なことを理解したうえで、正しい準備を進めましょう。
資格はあくまでもプラスの評価
資格は就活において必須ではなく、あくまでも評価を上げるためのものです。資格のない学生に対して「在学中何も努力をしなかった学生」と悪い評価をすることはなく、マイナスイメージを持たれるわけではありません。
ただし、企業・職種によっては資格の取得を必須としている場合もあります。企業研究の際は、求人内容をよく確認しましょう。
また、資格を持っていると専門的な能力面での評価が上がることは確かで、ESや面接でも自己アピールの引き出しが増えて有利になります。在学中に可能であれば資格を取っておくと、就活の際に役立ちます。
企業が求めているのはポテンシャル
企業が新卒に求めていることは「即戦力になる能力」ではなく「ポテンシャル」です。
「ポテンシャル」とは潜在能力を意味し、就活においては「入社後に成長し、企業に貢献してくれる能力」にあたります。具体的には「志望度の高さ」や「業務への熱意」、他には「企業理念に沿った考え方」「入社後の成長意欲」が挙げられます。
実際に、日本の多くの企業は「メンバーシップ型採用」を実施しています。メンバーシップ型採用とは、まず自社にあうと感じた人を雇ってから、それぞれに仕事を与える採用形式です。つまり、選考の際は「企業とのマッチ」を重視しています。
このように、企業側は新卒に対し「専門的な能力・技術は入社後に身に付けてもらえれば問題ない」と考えており、自社に尽くしてくれる「ポテンシャル」を求めています。
「ポテンシャル」をアピールするためには、志望する企業で自分がどのように活躍できるかをイメージすることが重要です。そのためには企業研究で志望先についてより詳しく理解する必要があります。こちらの記事で企業研究のやり方を解説してあるため、併せて読んで参考にしてください。
難関な資格ほど評価は上がる
希望の分野に関連する資格を持っていることは就活で有利で、特に難関なものほど高い評価がプラスされます。
難関な資格の例として、以下のようなものが挙げられます。
- 弁理士
- 技術士
- ITストラテジスト
- 一級建築士
これらの資格はどれも取得が難しく、受験自体に厳しい条件が課せられているものもあります。もし取得する場合は、早い段階での準備・勉強が必要です。
資格を持っていると、専門的な知識以外の点も評価されます。「その資格を取得するためにどれほど努力をしたか」「目標に向かって諦めずに取り組むことが出来たか」という点から、就活生の「やる気」や「集中力」も評価します。
つまり、資格は専門的な能力面だけでなく、人間性の評価にもつながります。もし希望する分野と違った資格を持っている場合も、こういった面を評価される可能性があるため、ESにはなるべく記載しておきましょう。
取得の難易度が高い資格は、その分評価が上がります。「難しい資格にも挑戦し、目標を持ってしっかりと取り組むことが出来る人物」という印象を与えることができるため、興味がある方は挑戦してみましょう。ただし、その分勉強に時間を割く必要があり、必ず取得できるわけではないため注意が必要です。
資格を取得したら、ESでアピールしましょう。こちらの記事でESへの資格の書き方について解説してあるため、参考にしてください。
資格職に就く場合は取得が必要
資格の有無で不採用になることはないと解説しましたが、職種によっては特定の資格を持っていないと応募自体ができない企業もあります。
例えば、弁理士や建築士、税理士などは資格職といい、資格を持っていなければ就職することはできません。これらの職業に必要な資格は、非常に難易度が高いところが特徴です。また、情報処理関連の理系の資格職も特別な資格が必要となる場合があります。
すでに自分の進みたい道が定まっている場合は、資格が必要かどうかあらかじめ調べておきましょう。資格職を目指す場合は、早い段階から資格の勉強に取り組むことが重要です。
代表的な資格職である税理士・建築士を目指す場合、こちらの記事で詳しく解説してあります。興味のある方は参考にしてください。
理系は専門職に就く確率が高い
理系の学生は文系に比べ専門職に就く可能性が高く、それらの職種は資格を持っていると大きくプラスに働くものが多いです。専門職とは専門性を必要とする、つまり「特定の領域での知識やスキルがあってこそ全うすることができる」職種です。
専門職の例を挙げると、新たな製品を創り出す「研究・開発職」やモノづくりが活かされる「製品設計職」、情報システムに欠かせない理系の代表的な職種「SE(システムエンジニア)」です。その他にも様々な職業が存在します。
専門職の中には前述した「建築士」などの資格職もあり、そうでなくとも関連する資格を持っていれば、専門的な知識を身に付けていることを高く評価されます。また「早くからその道を目指して努力していた」イメージがつき、志望度の高さも伝わります。
理系の場合、学校で勉強している内容がそのまま資格取得のための知識に直結する場合もあります。すでに進みたい分野が定まっている場合は、どのような資格があるか調べておきましょう。
別の記事で、エンジニアをはじめとした理系の代表的な職業について解説してあります。併せて読んで参考にしてください。
自己分析ツールを活用して、あなたの適職を発見しよう
理系の資格を就職に活かすには、早い段階でやりたい仕事を決めておく必要があります。つきたい仕事によって必要な資格が変わるからです。
やりたい仕事を見つけたい時に便利なのが、無料の自己分析ツール「My analytics」です。36の質問に答えるだけで、あなたの強み・弱み→それに基づく適職をサクッと診断できます。
My analyticsを活用して、あなたの強み・適職を診断し、自分に向いている仕事を見極めた上で、取るべき資格を検討しましょう。
理系におすすめの国家資格4選
理系の学生は資格を持っていると就活に特に役立つことを解説しました。しかし、一口に資格といっても多くのものがあり、どれを取ればいいか迷う人も多いです。
志望する業界・企業への関連性が高いものほど評価も上がるため、自分の進みたい分野に関する資格を選びましょう。なかでも国家資格は難易度が高いものが多く、合格するのも簡単ではありません。しかし、その分評価もプラスされます。
ここでは、代表的な理系の国家資格を4つ紹介します。
ITパスポート試験
ITパスポート試験は、平成21年4月に新設された情報処理技術者試験のうちのひとつです。「情報処理の促進に関する法律」に基づく国家資格で、IT技術者として基礎的な知識を有している証明になります。
IT業界への就職を考えている学生は「基礎知識を身につけている」「早い段階からITへ興味がある」ことを伝えるのに役立ちます。
情報処理系の基本的資格で、合格率は例年約50%と比較的難易度が低めです。ほとんどの人が独学で、参考書や無料の学習用ホームページなどを利用して試験に臨んでいます。
情報処理の基本となる情報リテラシーやセキュリティ対策などの内容も含まれるため、ITエンジニアを目指す人だけでなく、一般事務職などでも活かすことができます。
PCスキルがあることを資格としてアピールできるため、大きなメリットとなる資格のひとつです。令和2年の実施分で新設されてからの総応募数は100万人を越え、今人気の資格となっています。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能を持ち、実践的な活用能力を身に付けた者」が持つ資格として、経済産業省が開催している資格試験です。プログラマーやITエンジニアを始めとしたIT関係の技術者や、それらの職種を希望している人たちが受験します。
「IT業界で働くための基本的な知識があるかどうか」「情報処理に使う理論的な考え方ができるか」を問う内容で、他にも経営や管理についての知識も必要となります。
また、ITパスポートと同じIT技術者向けの資格ですが、基本情報技術者試験にはデータ構造・流れ図・アルゴリズム等の問題が出題されるため、プログラミングの知識も必要です。ITパスポートに比べかなり難易度が高めですが、その分専門的な能力をアピールできます。
危険物取扱者
危険物取扱者は法律で定められた危険物の取扱い、またはその立会いに必要な資格です。主に化学メーカーや研究所での業務に関連します。
一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う施設では、必ず危険物取扱者がいなければなりません。「甲種」「乙種」「丙種」の3種類があり、それぞれ特徴として取り扱うことのできる危険物が違います。
- 甲種:全類の危険物を使用可能
- 乙種:全類の危険物が6種類に類別されており、それぞれを個別に取得する
ことで使用可能 - 丙種:特定の危険物(ガソリン、灯油、軽油、重油など)を使用可能
自分の志望する企業・業界ではどれが当てはまるかを確認しておきましょう。
また、乙種、丙種は誰でも受験が可能ですが、甲種は乙種取得後、2年以上の実務経験が必要になります。学生時代は志望企業の取り扱う危険物を調べ、それに当てはまる乙種を取得するのが一般的です。
薬品会社、石油会社など、化学系の企業を志望する際のアピールポイントに使えます。それらの分野に興味がある方にオススメです。
危険物取扱者が活かせる化学メーカーに関しては、こちらの記事で詳しく解説してあります。併せて読んで役立ててください。
知的財産権管理技能士
知的財産権管理技能士は、「知的財産」を管理する能力を評価する資格です。「知的財産」とは、人が生み出したアイデアやブランドなど形はないが価値のあるものを指します。
理系学生は研究者やエンジニア等の研究・開発職を目指している方も多く、こういった職種は業務の中で新たな発明にかかわる機会が多いです。新しく発明された技術も「知的財産」に含まれるため特許の出願が必要であり、そういった場面で「知的財産」の基礎知識があればスムーズに事が運べます。
1~3級まで難易度があり、1級はかなりの高難易度で相当な知識がなければ合格は難しいです。2級の難易度は特別高くなく、独学の勉強でも十分合格が狙えるため研究・開発職を目指している人は挑戦してみましょう。
あなたが受けないほうがいい職業をスマホで確認してください
就活では、自分に適性のある仕事を選ぶことが大切です。向いていない職業に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまいます。
そんな時は「適職診断」を活用して、志望する職業と自分の相性をチェックしてみましょう。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、ぴったりの職業を診断できます。
強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。
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プラスの評価をもらえる資格
資格を取得する際は志望する分野に関連するものを取ることが大事ですが、幅広い分野でプラスの評価を得ることのできる資格もあります。
ここでは、多くの企業で持っていると評価が上がる資格を3つ紹介します。
どれもメジャーな資格のため、持っていても困ることはなく将来役立つ場面も多いです。ただし、手あたり次第に挑戦するのではなく、まずは自分の将来を思い描いたうえで必要と思ったものを取得しましょう。
TOEIC
文系・理系共通して有利となる資格と言えば、英語力を図るペーパーテスト「TOEIC(トーイック)」です。TOEICには複数の種類がありますが、ここでは一般的に企業が英語力の参考とする「TOEIC L&R(Listening & Reading Test)」について解説します。
最近ではTOEICのスコアを採用の必須条件としている企業もあり、就活だけではなく転職でも有利となります。特に旅行・航空業や海外支店のあるメーカーは600~700点は最低でも必要とされており、過去にTOEICのスコアを条件とした企業だと以下のようなところが当てはまります。
- ANA:600点以上
- JAL:600点以上
- JTB:650点以上
- 武田薬品工業:700点以上
- 日産自動車:730点以上
このように、上場企業ではTOEICのスコアを参考にしているところが多く、海外展開などを見越して英語力がある人材は重宝されます。
しかし、ある程度のスコアが求められることを注意する必要があります。低い点数をエントリーシートに記載した場合、逆に印象を悪くする可能性もあるので気を付けましょう。
TOEICについては別の記事で詳しく解説してあります。併せて読んで参考にしてください。
MOS
こちらもTOEIC同様メジャーで、ITスキルを証明する世界共通の資格「MOS」です。マイクロソフトが認定する資格で、ワードやエクセル、パワーポイントなどのソフトの操作の習熟度を計るものとなっています。
これらのソフトは仕事をする上で必要不可欠なもので、見積書の作成や数値の管理、プレゼン資料の作成などに使用します。会社で使う機会が非常に多いため、在学中に身につけておくと今後どの企業に行っても強みとして示すことができます。
MOSの難易度は一般レベルと上級レベル(エキスパート)に分かれています。初めから上級レベルを受験することも可能ですが、一般レベルでも十分業務上で活かせる知識は身につけることが可能です。「一般レベルでは評価されない」といったことはないため、自分の実力に合った難易度を受験しましょう。
MOSの資格取得は難しそうなイメージを抱かれがちですが、独学でも十分取得可能です。市販の書籍を参考にしながら実際にパソコンで操作をすることで、スムーズに操作を覚えることができます。
こちらの記事でMOSについて詳しく解説してあるため、興味のある方は参考にしてください。
簿記
経理事務に必要な「簿記」も就活で有利に働く資格です。理系には関係ないと思うかもしれませんが、簿記はビジネスパーソンであれば絶対に役立つ資格です。
経済の仕組みを把握して経営戦略を立てるスキルが身につくため、ビジネスの全体像がはっきりと見えてきます。社会人になってから取得する人も多く、どんな職種であっても簿記の知識が無駄になることはありません。
簿記検定には3つの種類がありますが、一般的に学生や社会人が受験するのは「日商簿記検定」です。実務で求められるのは2級以上なので、取得する場合は2級以上を目指しましょう。
こちらの記事では薄記について詳しく解説してあります。薄記の取得を目指す方は、併せて読んで参考にしてください。
大学生のうちに資格を取って損はない
資格を持っていないからと不採用になることはありません。就活間際に焦って無意味な資格を取って、時間と労力の無駄になることだけは避けましょう。
しかし、進みたい分野に関連性のある資格は就活で役立つことは間違いないため、在学中に取っておいて損になることはありません。目標に向かって取り組むその努力が企業側にも伝わるたため、希望する職が定まっている人は積極的に取得を目指しましょう。自身のスキルアップにも繋がるので、将来どこかで必ず役に立ちます。
自分の将来をイメージし、役立つ資格は取得し、就活の成功につなげましょう。